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2004年09月05日

9月5日 おわら風の盆

 富山に行ってきた。
新しく出す予定の本の「企画出しの為のロケハン」という限りなくプライベート旅行に近い(ギャラと経費も含めて)仕事のためだ。有名な八尾の「おわら風の盆」は一応押さえておいたほうがいいだろうということで、編集Iさんと1日の昼からと3日の深夜に八尾に行った。下調べの段階からあらゆる資料と行った人の言葉に「人が多い」と書いてあったので覚悟は出来ていて驚かなかったが、ここまで人が多いとわざわざ出かけて行って見るべきものではないなというのがひとつの結論。もちろん祭自体はそれなりにいいのだけれど、大勢で押しかけるようなタイプの祭ではそもそもないのだ。
 多くの祭が神道の「神事」の形をとっているが風の盆はそういった、例えば神輿の「渡御と還御」、「山から里」、「海から山」といった神事にみられる祭自体に方向性やプロセスを持たない。ひとけの少ない涼しくなった秋の夕暮れから深夜にかけて、各町の若い人がそろいの浴衣を着て、胡弓(これの音色がいい)と三味線と唄に合わせて、突発的にというか示し合わせて、踊りが輪になったり、流したり。通りがかりにその風情を楽しむ。というのが元々らしい。今は流しをやるとき、その前も後ろも巨大な人垣が取り囲み、その人垣ごと移動する有り様。人垣の外からはどうやら中心部で踊りをやっているらしいというのが焚かれるフラッシュで伺い知れる程度。時々人垣の周囲では観客同士が口論になっていたりする。話題になるとつい行きたくなるものだが、今のままでは一度行った人はもう一度は行かないと思う。
 面白かったのはこの祭には毎年有名人がたくさん観に来るらしいが、今回「高島礼子さんが来ているらしいわよ」と方々で聞いた。何となく「いかにも来そうな感じがする女優さん」だけど、ウワサが独り歩きをしているだけで実際は来てなかったりして。
 富山は父の故郷なので小さいときから何度か来ている。しかし日本中旅行しているのにプライベートの旅行では富山はじめ北陸にはほとんど来たことがない。無意識のうちに遠ざけていたような気がする。今回その土地と初めて仕事として向き合ってみて、子供の時に感じた富山の人や風景に対する印象の質感を少しづつ思い出した。徐々に自分の中に出来てしまった「富山感」とその背景を少し理解できた気がする。それはいずれまた。
 富山といえば海の魚の種類が多くてどれも美味しい。(特にイカとぶり、それに海老!)今回地元の方に連れていっていただいた店で、びっくりするほどたくさん天然鮎を出すお店があって絶句するほど美味しかった。鮎の刺し身、天ぷら、塩焼き(一人7,8匹出てくる)等。富山は川魚もイケルことを初めて知った。
 立山信仰についても見てきた。かつて大変に広がりをもった仏教世界が展開し広く人びとを惹きつけていた。明治の廃仏棄釈というのは本当にもったいないことをしたものだ、と今回も思った。

投稿者 Ken Kitano : 2004年09月05日 18:09