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2004年10月03日

10月1日 しょうぼうていハーヴィー

 朝、個展開催中の佐藤信太郎から電話で「客が誰も来なくて腹が立ってきたので、渋谷の街で暴れていい?」という屈折した愚痴を聞かされる。「つかまったら警察にはけんちゃんの名刺を出しておくから」と引き続き困ったことを言うので、とりあえず「会場にメモでも残して渋谷の町をお散歩してみては」と健康的なアドバイスをしておく。
 代々木のぶうぶう亭で豚カツを食べてから雑誌の撮影のため西荻窪へ。西荻は昔3年半住んでいたのでなつかしい。安くておいしい店があって若い人もたくさん住んでいて大きすぎずとってもいい街だ。また飲みに来よう。撮影が終わったころ佐藤信太郎からまた電話。「あの後たくさん人が来てたくさん感想も聞けて結構面白かった」とゆうことをいちいち電話してくるのがかなり能天気である。 
 家に帰って奥さんと「しょうぼうていハーヴィー ニューヨークを守る」の話しをする。この本はマイラカルマンという人が描いた絵本で、どうゆう話しかというと1931年にN.Y.で作られた消防艇のハーヴィーはハドソン川で桟橋の火事を消す消防艇として活躍してきた人気者。やがて桟橋も使われなくなり廃船になる運命だったハーヴィーをフロランというレストランの常連客たちがお金を出し合って買うことに。修理して化粧直ししたピカピカのハーヴィーは再びハドソン川に戻ってきた。そんな2001年の9月11日朝。ニューヨークに大きな悲劇がおこる。知らせを聞いた仲間達はハーヴィーにのって現場へ。もうハーヴィーが消防の仕事をすることはないだろうとだれもが思っていただが、消火栓が瓦礫の下になって消火活動ができない消防車にハーヴィーは4日4晩水を送り続けて消火活動をする。後日、大活躍したハーヴィーに市から感謝状が贈られた。ツインタワーは無くなりたくさんのひとが亡くなったニューヨークでハーヴィーは再び静かに暮らすに戻った。この本のいいところは絵もかわいいのだがテロのことを描くのに誰が何をしたということは一切いわずに、ある日「おそろしいことがおきた」だけ書くのだ。
 そもそもこの本のことは漫画家の久住さんからうかがった。以前この本の英語の原本を見た久住さんが気に入っていい本だから誰か日本で出さないかと思い、そのことをHPに書かれた。それを読んだ出版社リトルドックプレスの方が是非出したいとアメリカの版元に交渉を始めた。小さくて新しい会社なので始めはいい返事をもらえなかったが、著者が以前リトルドックプレスで出した本を見て一発でOKを出した。その後翻訳者を探したが誰も受けてくれない。なぜかというと親米の立場と思われたくないからという。それもおかしな考えだ。それならとだめもとでとミュージシャンの矢野顕子さんに打診したらすぐにOKがきた。そのようないきさつがあってようやくこのかわいらしい絵本が生まれた。で、偶然なんだけどそのリトルドックプレスと私も仕事をしていたのに最近気がついた。近く文芸春秋が出す新撰組の本で、以前私がSPA!エッジな人々で撮った浅田次郎さんの写真を使いたいというのでお貸ししたのだが、その本の編集制作をしていたのがリトルドックプレスだった。FAXだけのやりとりだったのですっかり忘れていた。本というのはいろんな人の熱意やきっかけが重なって世に出るものだけど、小さくて志の高い出版社がガンバッてこのような質の高い本を出すというのはいい話しだ。

投稿者 Ken Kitano : 2004年10月03日 15:59