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2009年06月28日

展覧会のご案内 改めて

個展のお知らせをメールで各方面にお送りした。早速リアクションの早い方々から返信を頂いた。
そのなかに「文字化けして読めねえ」というメールもたくさん。
Windowsの人はだいぶ文字化けしていたらしい。文字化けのメールって何の役にも立たない上にもらうと相当無力感に襲われる。すみません。
というわけでくどいですけど展覧会のお知らせと近況です。

みなさま

梅雨お見舞い申し上げます。
新作のカラー・ランドスケープシリーズ『one day』の個展を開催致します。
初個展以来15年間で2度目というスローペースの作家です。
この機会にぜひご高覧ください。

      北野謙 『one day』 

会場    :MEM
     大阪市中央区今橋2-1-1新井ビル4F TEL.06-6231-0337

      http://www.mem-inc.jp

展覧会会期 :2009年7月11日(土)〜8月8日(土)
開廊時間 :午前11時〜午後6時
休廊 :日曜日・祝日・月曜日

関連企画 :本尾久子氏と北野謙による対談+レセプション 日程7/11(土) 要予約(定員30名 対談 16:00〜 / レセプション 18:00〜

(本尾久子氏プロフィール‥‥展覧会、写真集や、ウェブサイトなどを通して、写真を多角的にプロデュースしている。90年代にパルコギャラリーのディレクターとして活動したのち、独立。有限会社マトリックスとともに、レーベル「eyesencia」をたちあげる。エプサイトのキュレータや国内外の展覧会、eyesenciaレーベルからの写真集と写真家のオフィシャルサイトの制作などを行っている。)

お問い合わせ:担当 福田
http://www.mem-inc.jp/

○ 展示内容

Color type- C print 約15点(18×22inch及び40×48inch)

※一部壁面に展示していない作品もございます。マット装にてごらん頂けますのでお気軽にギャラリースタッフにお声をおかけください。

○ 作家コメント

 『one day』  ( landscape series 2007〜)

 ランドスケープシリーズの「one day」はタイトルの通り、ある場所のある一日≠一枚のフィルムに焼き付けている。様々な場所の、できれば24時間あるいは日の出から日没までを、物理的に難しい場合(多くの場合はそうなのだが)はできる限り日中の長い時間を、いずれにしてもかなりの長時間露光で銀塩フィルムに撮影しています。そして一枚に結晶した、いわば垂直軸の「場所の時間」を水平に連ねるように展示する。

 グローバル化は世界の垣根を崩して容易に人や情報、商品の行き来を可能にしたが、「違いと強弱」で世界を測る価値観を隅々まで加速させた。それは他者の存在や見知らぬ場所に「いま時間が流れていること」をイメージすることを妨げる。各地のさまざまな「場所と時間」をイメージ化して水平に連ねることは、そのことへのささやかな抵抗である。もっと言うとグローバル化が引き起こす非対称なイメージの格差は、ともすると実際にあるはずの人の存在や時間を「なかったこと」のようにしてしまう。しかし「時間と光」のメディアである写真を用いることで、世界を「なかったこと」にするのではなく「既にあること」としてとらえ直したいと私は考える。

 かつてモネはルーアンの大聖堂前で身悶えするような思いで連続する時間と格闘した。私もそんな勝ち目の無い負け戦を各地で続けている。様々な場所の“一日”である。

 いま、こうしている瞬間にも様々な場所で現実が進行している。当たり前だが、私にはそのことがいくらも想像できない。そしてそのことにどうしようもない苛立ちと諦めを覚える。あらゆる場所に流れているはずの時間を、目の前のこの現実と地続きに連続にイメージしたい。そうした私自身の苛立ちをこの作品を作る中でみつめたいと思っている。そしてできるならばもう一方の仕事である「our face」シリーズ同様に対称性を伴って世界をイメージする手がかりにしたいと思っている。                               

○ 主な撮影地

沖縄摩文仁洞窟、大阪道頓堀、神奈川県立相武台高校の教室、神奈川県立相武台高校の教室、広島原爆爆心地、新宿駅前、 ハンセン病療養所国立長島愛生園、大阪通天閣、片瀬江ノ島海岸など


○ 関西圏以外にお住まいの方には恐縮です。いずれ東京でもなんらんかの形でご覧頂く機会を作りたいと思っております。


●その他の北野謙についてのお知らせ
○「our face」、「one day」両シリーズのルーツであり、昨年のParis Photo2008 BMW Awardにもノミネートされた90年代の東京を撮影したモノクロ作品「溶遊する都市」の写真集を今秋の出版に向けて準備中です。あわせて写真展も計画しています。2000年代と90年代のふたつのランドスケープ写真を近い機会にご覧頂きたいと思っています。

○1999年から継続しているポートレイト「our face project」は現在アジア各地の人々の肖像を制作しています。来年には全アジアの撮影を終える予定です。いずれ「stage1: our face ASIA」としてまとまった形で発表したいと思います。
発展目覚ましい中国とインド、さらに世界の三分の一を占めるイスラムの人々が暮らすアジアは、一方でインドをのぞく多くのエリアで急速な少子高齢化が進んでいます。この時代にこうしたアジアを作品にしていくことは興味深いです。プロジェクトでは中東から極東日本までのあらゆる人の重なりの群像写真を水平に連ねます。そしてstage 2のアメリカへと続く予定です。
いまアジアは中国を中心に発展するアート状況も刺激的です。アジアでの滞在制作と展覧会も計画しています。

○ウェブサイトをリニューアルしました。近況も随時アップしております。(以前のurlが残っている場合は一度消して再度アクセスしてください。)
http://www.ourface.com/

厳しい気候が続きますがみなさまどうぞご自愛ください。

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北野謙 Ken Kitano
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投稿者 Ken Kitano : 09:16

2009年06月08日

6月6日 大阪

7月の個展「one day」のプリントがすべて仕上がった。
このシリーズは一日の光景をまるまる長時間露光するので、現実にはない誰も見たことのない色と光。テストを繰り返して、手探りで自分のなかで着地する色をさがした。一時はどうなるかと思ったが納得のいくプリントになった。

ほっとしたらうれしくなって、すぐにギャラリーで展示プランを詰めたくなって大阪行きの夜行バスに飛び乗った。安い4列シートのバスにしたら(片道5000円)体が今川焼なった気分。ぜんぜん眠れなかった。(いろんな国で夜行バスに乗ったけど全体的に日本のバスはシートが狭いよ。)

今回は20点のプリントを制作した。うち2点がラージサイズ(イメージ寸の短辺が1050mm)で他は18×22インチ。ただしギャラリーの壁面の関係で展示できるのは12点程度。あとは希望の方にマット装で見てもらうつもり。

今回の作品には沖縄や長島などいくつか重い背景を持った場所がある。それらを特別な場所と見るのではなく、目の前の現実の地続きに見たいと思う。対称に。世界に特別な場所なんてない。あらゆる風景は過去(=死)の堆積物だ。いっそこの地上のあらゆる地表という地表をトレースしてしまいたい。そんな感じで撮っている。そのことがいま生きていることを考えることにもつながっている。だから対象は「あらゆる」場所へと向かう。限られたスペースで、展示の構成はまだ見えないけど、わくわくしている。
MEMの個展は7月11日から。初日の11日にはキュレーターの本尾久子さんをお迎えして対談トークショーを予定しています。詳しくはまたアップします。

大阪に行ったついでに国立国際美術館で杉本博司「歴史の歴史」展を見て来た。すごーく面白かった。神像がいくつかあった。神道は仏教と違ってあまり像を作らない。神像自体とても少ない。共同体の祈りである神道で見えないものをイメージ化した希有な存在である神像が、数々の美術コレクションのなかで僕にはひときわ印象深かった。すべての美術展は美術とは何かを問うものであってほしいといつも思っているが、ひとがイメージを刻むこと、刻まれたイメージから新たなイメージが生まれることのさまざまな珠玉の連続は楽しかった。(個人的にはもっとジャンクなものも大好きだけど。)

投稿者 Ken Kitano : 19:17