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2009年09月08日

写真集 「溶游する都市」

東京フォトのブースでもチラシとつか見本を用意して写真集の告知をしました。おかげさまでたくさん反応を頂き、予約もいくつか頂きました。
こんどの写真集はチャレンジです。

この「溶游する都市」は1989年から97年頃までの作品で、いまの僕の作品にもつながる原点です。19歳から20代の半ばまでの作品ですが、いままで何度か形になりかけました。撮り始めて20年を経てやっといま形になりつつあります。

昨年のパリ以降、そもそも写真集って何かということから考えてしまいました。アーティストの仕事はあらゆる人(他者や何世代も先の人を含みます)をつなぐイメージの回路をつくることだと僕は思っています。(だとしたら今こそアートが必用な時代はないのではないでしょうか。)そう考えた時100年、200年先の人まで伝わることを考えて本を作っている作家や出版社は本当に少ないなと生意気にも思ったのです。

昨今の経済状況を考えると、いくつかの版元がクオリティーの高い写真集を出し続けているのは本当にすばらしいと思うし、実際僕も大好きな本がたくさんあります。ですが、写真集を作品集として考えた時、あるいはアートの一形態と考えた時、前途のようなことを考えてしまうのです。

実際パリでは細江英公先生の「薔薇刑」や森山大道さんの「あっ、荒野」復刻特装本などは、コレクターに注目され、大切に人の手に渡っていっている気がしました。ああゆう本は間違いなく100年残ると思います。そういった特装本でなくても、例えば世代的に僕などは若い頃田原圭一さんの「窓/エクラ」を無理して買って、頁を開く度に全身で感じながらわくわくして写真集を見た感触がまだ体の中に残っています。巨匠でなくとも僕のような作家の仕事でそのような写真集はできないのだろうか。そんなことを考えて昨年末からいろいろな人に会い、相談してきた結果、幸いにも志の高い皆さんに出会え、最高のチームで本当の意味での作品集のひとつの形ができつつあります。
自費出版です。

そう、写真集は本当の意味での作品集とカタログ的な本とこれから二極化すべきだと思います。それに折りやとじ、クロス張りといった製本の職人さんがすごい勢いで廃業しています。あと10年したら日本でちゃんとした作品集が作れなくなるかもしれません。そうなってほしくはないけれど、そんなことも考えて今回はチャレンジすることにしました。300〜400点くらいのなかからたった23点に絞って、大版で和綴じの西洋製本。普通はあり得ない作りです。

ADの町口覚さん、編集の本尾久子さん、販売に関してはギャラリーMEM石田さん、どなたも質に対する要求がとても高く妥協をしない方たちで、ある意味で誰もが予想しなかった最強チームの気がします。(私以外の皆さんにMがつくのでプロジェクトMとよんでいます。翻訳は日高優さんが急遽してくださることになりました。日高さんありがとうございます。)

いま全員の目標が11月のパリフォトにあります。パリの初日にMEMとマッチアンドカンパニーのブースに写真集が並ぶ予定です。

チラシを置いてくださる方はこのサイトからメールを下さい。すぐにお送り致します。ken@ourface.com
ご予約、お問い合わせもメールでどうぞ。(ご予約はお名前、ご住所、電話番号等をおかきのうえ、オリジナルプリント付きかプリントなしかと冊数をお書き添え下さい。)

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北野 謙 写真集「溶游する都市」2009年11月発売予定。
造本:町口 覚  編集:本尾久子 発行:MEM INC
写真23点/108頁/縦330ミリ・横360ミリ/糸縢袋綴上製本/豪華函装
限定:500部 (エディションナンバー・サイン入り)
予価:〈400部〉18000円+税/〈100部〉48000円+税(オリジナルプリント付き)
ご予約・お問い合わせ:MEM INC 〒5410042 大阪市中央区今橋 2-1-1
新井ビル4階16号室
Tel. 06-6231-0337 
Fax. 06-6231-0338 
E-Mail: info@mem-inc.jp またはken@ourface.com北野まで。

Ken Kitano photography book
「flow and fusion」
coming out on 2009 November

art direction: Satoshi Machiguchi
edited by Hisako Motoo
product by MEM INC

hard cover/ 108pages/23plates/h330mm,w360mm
limited edition: 500 numbered and signed(including 100 special editions with an original print)
inquiry: MEM INC. #16 4F 2-1-1 Imabashi Chuo-ku Osaka-city 541-0042 Japan
phone. 81-6-6231-0037 fax. 81-6-6231-0338 e-mail. info@mem-inc.jp

投稿者 Ken Kitano : 09:49

東京フォト 終わってみて

日本で最初の写真アートフェアの東京フォトがありました。初日は人が少なくてどうなるのかな、と思ったけれどだんだん増えて最終日はかなり活気があった。終了間際は少しだけパリフォトのような雰囲気だった。(あれが初日だったらよかったのに。)終盤に来て僕の作品も少し動いたのでほっとした。しかし東京アートフェアなどに比べても本当にカタイです。(特にコレクターさんの財布のひもが。)ちなみに商談する方の多くが外国人のコレクターさんでした。日本人は作品を見るのにもまだ距離感があります。何しろ初めてのフェアだから、参加する方も来る方も徐々にフェアに慣れていくといいと思います。

フェアはあくまで作家のではなく画廊のビジネスの場だけど、続けて出していただけると、例えば一昨年パリで見たという人が話しかけて来て、その人がまた友人をつれて来たり(中にはその人がコレクターだったり)、というようなことがある。そうゆうのは作家としては嬉しい。新作展を大阪でしたので、大阪まで見に来られなかった方に今回新作を見ていただけたのもよかった。

開幕前から「東京フォトってどうなの?」的な空気を関係者に感じた。詳しく存じ上げないけれど事務局はご苦労があったのではないか。画廊もリスクだと思うけれど、個人的にはとにかく業界的にも開催になってよかったと思う。そして来年以降も続けてほしい。だって今年からフォト台北、来年から香港とシンガポールで、韓国と北京は写真のフェアが既に定着している。日本でもしっかりマーケットを作らないと写真のマーケット地図から日本だけなくなってしまう。

それに他の美術同様、国内重要作品の海外流出が止まらないでしょう。今年のを見た感じでは写真専門のギャラリーが少なかったこともあって、若手か大御所かどちらかという印象。日本の写真の層の厚さがいまひとつ感じられない気がした。その点うちのギャラリーは1930年代のビンテージから現役は20代まで各世代の作家の作品があって、バランスいいと(手前味噌だけど)思った。
マーケットのことに限らず言えるけれど、日本の写真を日本の外から、写真を写真の外から見る視点が少ない気がする。取材に来たジャーナリストや関係者や作家は少なかった気がする。

個人的には、今回のようにアメリカの写真に軸足を置くのもいいけれど、東アジアの画廊を誘致して、香港から台湾から中国から、東京にくればアジアの写真がわかる、という風になるとヨーロッパから来る人がでてきていいと思うのだが。あるいはコマーシャルギャラリー以外もイレギュラーなブースを作ってディープな新宿の自主ギャラリーを誰かディレクションできないものか。難しいと思うけれど。

今回は作品以外で写真集のチラシとつか見本をブースに置いて興味を持った方にお知らせした。写真集に関して反応を頂いたのも僕には収穫だった。

投稿者 Ken Kitano : 07:56

2009年09月04日

東京photo

日本で初めての写真のフェアTokyo Photoが始まった。昨日プレビューがあったので行って来ました。
写真ギャラリーよりも現代美術系のギャラリーが多いです。アジアではフォト北京が先に定着しつつあるから、東京も盛り上がってほしい。

私の作品の取り扱いギャラリーMEMのブースでは新作one dayほか、our face ASIAや制作中の写真集の資料も置いてますから、お越しの際はお立ち寄りください。

TOKYO PHOTO SEP.4〜SEP.6
http://www.tokyophoto.org/

投稿者 Ken Kitano : 09:50