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2011年09月19日

イラン

10日間ほどイランに撮影に行って来た。久々の撮影だった。
前から行きたかったクルド人の土地クルディスタン、それから内陸のスファハーン、最後にペルシャ湾のバンダルアッパースへと、駆け足の旅であった。大変に乾燥した気候だった。空気はドライだがイランの人はとても親切で優しい。それに世界一といっていいくらい親日的であった。911から10周年ということも多少あったのかもしれないが、カメラを持っているということで私服警官の職質に度々あった。フィルムを取られるということはなかったかれど、締め付けのある国ではあった。とにかく時間がなくて準備不足はいなめなかった。

帰国後すぐにたまっていた仕事に忙殺されている。
1,2巻のご予約頂いた方に届いていなかったり、なぜかその調整もするはめに。
3巻の写真掲載許諾もやっぱり僕がやるしか進まなさそう。一向に制作に戻れないでおります。

それでも17日は地元立川で反原発のデモに参加。19日の都内のものも取材を兼ねて行きたかったが、まったく時間なし。

告知10月8日に福島辰夫評論集出版記念イベントとしてナディッフ恵比寿にて、細江英公さんをお招きしてVIVOのお話をうかがいます。
10月8日 18時30分〜20時 NADiff a/p/a/r/t(1階)細江英公(写真家)×聞き手北野謙(写真家、本書の編集を担当)ゲスト(予定):福島辰夫(写真批評家)
入場無料 問い合わせ:ナディッフアパートtel:03-3446-4977

23日からTokyo Photoがあります。今年はMEMも出展します。MEMブースへお越し下さい。

投稿者 Ken Kitano : 22:58

2011年09月03日

9月3日 発売になりました!

福島辰夫写真評論集1、2巻が発売になりました。
アマゾンでの取り扱いも始まっています。(詳しい情報はまだアップされていませんが。)
ライトでしっかりした本です。
もう幻でも伝説でもありません。
ぜひ手にとってご覧下さい。

やっと3巻の打ち合わせを今週町口さん、本尾さんと。3巻「破綻と彷徨」は1、2巻と構成も文体も写真の量もまったく違うので、町口さんは組版から考え直すとのこと。
大急ぎでお借りした写真の返却や献本の準備等々。イベントとチラシの段取りだけしてあとは版元にお任せする。
はれて1,2巻は僕の手を離れた。

急速に頭の中が評論集のことから年末の写美の展覧会のことと中東撮影のことに切り替わってゆく・・・。
写真家に復帰!

  * *
以下、窓社発のプレスリリースより

『福島辰夫写真評論集・全3巻』の出版のご案内

この度、半世紀を越えて写真批評を続けてきた福島辰夫氏の写真評論集を出版致します。ここに謹んでご案内させていただきます。

福島辰夫氏は1928年生まれ。写真、美術に関わる多くの批評を発表し、またデモクラート美術家協会、VIVO、「10人の眼」などの運動にも関わって来られました。福島氏の数多くの論稿から1960年代、70年代を中心に選び、全体で29本のテキストを3冊に分けて出版致します。
書評などをご検討頂けるようでしたら「見本」本をお届けいたしますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
また、学校の講義やサークルでのテキストとして活用される場合は、便宜を検討させていただきますので、お気軽に御相談いただければと存じます。
本書についてのお問い合わせは、発行元の窓社までご一報ください。

【全三巻の内容】
第1巻 写真を発見する世界    8月30日刊行
46版・ソフトカバー 200頁  定価2310円(2200円+税)
ISDN978-4-89625-104-3
第2巻 「10人の眼」・VIVOの時代 8月30日刊行
46版・ソフトカバー 240頁  定価2520円(2400円+税)
ISDN978-4-89625-105-0
第3巻 破綻と彷徨  9月下旬刊行予定
  46版・ソフトカバー 220頁予定 予価 2730円(2600円+税)
ISDN978-4-89625-106-7

責任編集:北野謙   デザイン:町口覚   編集:本尾久子

発 行 株式会社 窓社 

【本書について】
福島辰夫氏は1950年代後半から、当時の新しい写真家たちと行った「10人の眼」展と、写真家たちによるセルフエージェンシーVIVOに関わりました。石元泰博、東松照明、奈良原一高、細江英公、川田喜久治ら、後にひとりひとりがほとんどひとつのジャンルであるといえるような写真家たちが集まった「10人の眼」・VIVOは、リアリズム一色だったそれまでの日本の写真を大きく飛翔させました。本書は「10人の眼」、VIVOについての貴重な証言といえます。
また福島氏は安井仲治、中山岩太、田本研造ら戦前、戦中の作家を丹念に検証しました。単に「昔の写真だからいい」といったそれまでの評価に反撥し、再評価したことも、氏の重要な仕事といえます。
福島氏は雑誌、新聞、展覧会図録等に膨大な文章を発表していますが、これまで書籍として出版されることはありませんでした。本書は60年におよぶ氏の批評活動で初めての著書となります。編集は1968年生まれの写真家・北野謙氏が行い、デザイン・装丁は北野と同世代の町口覚氏が手がけました。40歳以上離れた写真家とデザイナーが作ったことは、本書のユニークな点であるといえます。
若い世代にも買いやすいようにとの考えから、従来の写真評論集よりも安く価格を設定しました。写真、美術関係者のみならず広くお読み頂きたい本です。

【著者略歴】
福島辰夫 Tatsuo Fukushima
写真批評家。1928年東京生れ。1951年東京大学在学中に画家・岡鹿之助の勧めにより美術評論を志す。1952年頃から瑛九を中心にした「デモクラート美術家協会」に加わる。1957年から当時の新しい写真家による展覧会「10人の眼」展をオルガナイズする。1959年に写真家によるセルフエイジェント「VIVO」設立。(メンバーは細江英公、東松照明、川田喜久治、丹野章、奈良原一高、佐藤明)。1981年から約3年間に全国33カ所で「いま!!東松照明の世界・展」を行う。以後国内外で独創的な写真展のオルガナイズ、キュレーションを数多く行う。1986年エド・ヴァン・デル・エルスケン展「サン・ジェルマン・デ・プレの恋」(プランタン銀座)、1990年アーサー・トレス展「魔法の楽園」(キリンプラザ大阪)、1993年森山大道展「仲治への旅」(柏崎市エネルギーホール)、1995年川田喜久治展「ラスト・コスモロジー」(横浜タワーギャラリー)など。

【各巻の内容】
第1巻「写真を発見する世界」
「世界認識の方法」としての写真について、写真史を俯瞰するテキストを集めました。「個人像をめぐって」(1966)、「VIVOの時代」(1978)、「歴史は何を教えるか」(1961)など収載。
(登場作家:安井仲治、横山松三郎、石元泰博、川田喜久治、佐藤明、丹野章、東松照明、奈良原一高、細江英公、アルフレッド・スティーグリッツ、ナダール、キャメロン夫人、アジェ、ベレニース・アボット、ルイス・ハイン、ロバート・キャパ、ブルース・ダビットソン、ジェリー・クック、ロバート・フランク、ウィリアム・クライン、エド・ヴァン・デル・エルスケン、リチャード・アヴェドン、ユージン・スミス、ポール・ストランド、ドロシア・ラング、エドワード・ウェストンなど)

第2巻「10人の眼」・VIVOの時代
具体的な作家についてのテキスト。とりわけ1950年代60年代に福島氏とともに、それまでになかった作家個人のパーソナルな写真表現を生み出し、現代写真の大きな飛躍となったVIVO、「10人の眼」の作家について。その次の世代にあたる荒木経惟、森山大道についても触れた「極私と超国境の空間から」(1973)。他にエドワード・スタイケンインタビュー(1955)、「私のデモクラート、瑛九のデモクラート」(1999)など収載。
(登場作家:川田喜久治、東松照明、奈良原一高、石元泰博、細江英公、丹野章、荒木経惟、森山大道、エドワード・スタイケン、ユージン・スミス、ダイアン・アーバス、ニエプス、田本研造、瑛九、岡鹿之助、利根山光人、小林和作、靉謳、滝口修造、久保貞次郎など)

第3巻 破綻と彷徨 
戦前、戦中の作家、安井仲治、中山岩太や田本研造、野島康三、高野直太郎について。これらの写真家が過酷で閉塞した時代のなかで、あの豊で深い写真をどうなし得たかを、丹念に検証し再評価した「破綻と彷徨」(1974)を中心に構成します。福島氏の仕事のなかでも重要と思われるテキスト群です。「東松照明」(1976)を収載。
(登場作家:東松照明、高野直太郎、安井仲治、中山岩太、田本研造、野島康三など)


〈福島辰夫の言葉〉について ―― 北野謙
「10人の眼」とVIVOは、日本の現代写真の大きな飛翔となりました。本書はそれについての最初の書物となるでしょう。

福島辰夫さんの文章を読む時、自分が連続する歴史の只中にいること強く意識します。過去の重要な言説だから本にしたい、当初はそんな気持ちで出版を進めていました。しかし僕の中で徐々にモチベーションが変わっていきました。

写真家の仕事は、(中略) われわれを溶かし、なめくじのように人間そのものを解消させようとしている現実のまっただなかで、なおかつ、人間の存在を主張し、まもりつづけるものなのである。
――(1巻より)

例えばこのような言葉は、3.11後を生きる私たちの今にダイレクトに接続します。

滅びゆくものは滅びます。また、滅ぼすべきものは滅ぼすべきです。
大切なことは、喰いとめることではなくて、あらたに見出していくこと、つくり出していくことです。――(2巻より)

VIVOについて書かれたこの一節は、社会が変化し、写真の可能性についてひとりひとり考え、自ら写真の置き場所を作らなければならない、我々の今そのものだと僕は感じます。
福島さんの言葉は、この時代を生きる我々にとって重要だから、今写真をする人に必要だから本にしよう、そう思ったのでした。このことはデザイナーの町口覚さんも同じであったようです。

私にとって、写真は、世界認識の方法です。――(1巻より)

と書く福島さんは、批評を「運動」と捉え、書くことは批評行為の一部であると考えて来られた。
現実へ、何者にもとって替われない、自ら考えた方法で、責任とリスクを背負って踏み出すことの積み重ねを「経験」と呼ぶなら、そこから見える風景を言葉にできる力を、僕は「知性」と呼びたい。福島さんの言葉と向き合ってきたこの1年半は、僕には知性について考える時間でもあったように思います。
                                    2011年8月20日
北野謙  Ken Kitano
1968年生まれ、写真家。代表作に「our face project」、「溶游する都市」などがある。
2011年岡本太郎現代芸術賞特別賞、東川写真賞新人賞、2004年写真の会賞など。
2011年末に東京都写真美術館の新進作家展に出展、MEM画廊にて個展開催予定。


【出版関連イベント】
出版記念ブックフェア&トークイベント(予定)
本書の出版を記念してアートブックショップ・NADiff a/p/a/r/tにて
ブックフェアおよびトークイベントを行います。

トークイベント:10月8日 18時30分〜20時 NADiff a/p/a/r/t(1階)
細江英公(写真家)×聞き手北野謙(写真家、本書の編集を担当)
ゲスト(予定):福島辰夫(写真批評家)
主催:ナディッフ+ 窓社
入場無料
問い合わせ:ナディッフアパートtel:03-3446-4977
あわせて、店内で「10人の眼」・VIVO関連のブックフェアを行います。
VIVO作家を中心に写真集、書籍、図録、ポスターなど。
日程:9月下旬?
ナディッフ アパート 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F

連続講座(予定)
福島辰夫写真評論集をテキストにした現役の批評家による連続講座。
10月〜12月の間に4回程度。(戦中から戦後まで2回、戦後VIVO以降2回)
講師:未定
受講料:未定
日程(予定):10月〜12月の間に4回程度。(戦中から戦後まで2回、戦後VIVO以降2回)
場所:MEM 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff a/p/a/r/t 2F
主催:MEM 問い合わせ: MEM 担当:高橋 
Tel 03-6459-3205 FAX03-6425-9482,http://www.mem-inc.jp E-mail: art@mem-inc.jp

中山岩太展
3巻「破綻と彷徨」に登場する中山岩太のニュープリントによる展覧会
10月8日〜11月上旬
場所:MEM 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff a/p/a/r/t 2F
主催:MEM 問い合わせ: MEM Tel 03-6459-3205、E-mail: art@mem-inc.jp

福島辰夫氏が写真評論を始めるきっかけになった瑛九の生誕100年展が開催中です。
生誕100年記念 瑛九展―輝き続ける自由の魂
宮崎県立美術館  〜8月28日
埼玉県立近代美術館、うらわ美術館(2館同時開催)
9月10日〜11月6日  http://db.museum.or.jp/

投稿者 Ken Kitano : 13:52