« 2012年02月 | メイン | 2012年04月 »

2012年03月23日

福島辰夫写真評論集第3巻「破綻と彷徨」入稿!

遅れていました福島辰夫さんの写真評論集第3巻「破綻と彷徨」はようやくすべて入稿が済みました。昨年9月に1、2巻が出て、3巻も昨年のうちに出す予定でした。しかし関係者の多忙と、写真許諾、校正に時間がかかり春の出版となりました。
とりわけ校正はもともと古い文体と語句に、さらに古い引用が多様されており、一時は際限がないと思える程でした。
4月初旬に店頭に並ぶ予定です!

1974年に『フォトアート』誌に連載された福島さん「破綻と彷徨」は、日本の戦前戦中の写真家について、本格的な調査研究された最初の事例といえるもの。作家は中山岩太、安井仲治、野島康三、田本研造ら北方の写真師たち、高野直太郎など。70年代当時、写真における「アノニマス(=埋もれた、無名の)」の要素が重要視される動きがあった。東松照明さんやプロヴォーグの作家のなかにそうしたことへの発言があった。そのような時代に書かれた「破綻と彷徨」は、今に続く日本の写真と日本の写真の「置かれ方」を考えるとき、重要な意味を持つ。

中山岩太、安井仲治などはその後も研究され、展覧会や写真集も出されている。
今回はそうしたご遺族や研究者のご努力を知る機会ともなった。
写真は福島さんが調査取材した当時は、いまのように作家研究の機関も方法も確立されていなかった。手探りのような独自の取材であったようだ。初出の作品掲載は、現代では定説になっている発表方法、タイトル、トリミングとだいぶ異なるものも含まれる。今回は関係者のご協力で初出にできるだけ忠実に掲載することができた。
3巻の表紙には次の言葉を載せた。

その頽廃(たいはい)や虚無や廃絶のさなかから、なにごとかを生ぜしめ、なにごとかを新たにあらしめる――
そのために自らの創造力のありったけをかけて、一歩もあとにはひかないことーー

最低最悪の時代を圧力に屈せず全力で生き抜き、閉塞のなかで深い表現を成した中山岩太についての言葉である。
本書は震災後を生きる我々にとっても重要な言葉であると信じている。

投稿者 Ken Kitano : 09:01