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2003年09月21日

9月21日 「バッケ」楽日

 とりふね舞踏舎の公演「バッケ」を観に横浜ドームシアターへ。台風が接近しているらしく雨足が強い。途中武蔵小杉で三上香代さんとイタコの松田さんへ渡す花束を買う。道が混んでいて会場に着いたのは開演5分前。松田さんのポートレートを楽屋で撮影する約束をしていたが時間がない。客席に入ると8割方埋まっている。外の音が筒抜けのこの劇場だが、雨の音が街や車の音を遮断してくれている。雨はこのドームシアターに味方したようだ。ゲネの夜に沖縄料理屋で隣り合わせて意気投合したYさんと娘さんに会う。小さい娘さんが  舞踏を観て怖くて泣き出さないか気になっているうちに開演。
 今日は前の席。出演者の表情や細かい手や足の動きのデティールに惹き込まれる。リハーサル、ゲネは後ろの客席から観た。そのときは色(この公演は衣装の色や形が大変美しい)や照明が鮮烈にに観えた。舞踏は観る席によって印象が随分と違うものだ。舞踏を観る経験が少ないのかどう観ていいのかわからない部分もあるのだが、とにかくこれまで気になったところを意識して、また一方ではじめてみる新鮮な気持ちで観る。時間が過去へ過去へと遡るよう。その過去は新しい。前後へと進む時間。途中、能狂言、いたこの松田さんの声、何語でもないひとつも調和のないコーラスの波、朝鮮半島の唄が、地べたから這い登ってきて、やがてうねるように会場を吹き荒れる。そのとき板のうえの肉体がいろいろな風景に見えた気がした。
 稽古のときに香代さんが役者さんたちにかける言葉が面白かった。「背骨にぶら下がる」、「ホネの浮いた皮膚の袋を作る」、「動きというのは通り道を空けること」など。肉体と対話するための比喩、言葉のイメージの豊かさに圧倒された。そういえば著書「器としての身体」(波書房)にも「輪郭を溶かしてしまう」という意味のことが書かれていたが、これなんかは私も常に思っていることだから親しみがわく。今回は出演者の方々のour faceの肖像を撮らせて頂いた。その「ourfaceバッケの肖像」ができ上がるのが楽しみ。
 終演後Yさんと一緒に楽屋に行く。松田さんはいつもと違ってかなりナーバスなかんじ。花を受け取るのがやっとと言う感じ。舞台撤収の手伝う。裏方、役者、全員参加で手際よく舞台を畳んでゆく。次回は10月18・19日の京都公演。(京都大学西部講堂、問い合わせtel/fax075-702-5118とりふね舞踏舎email torifune-butohsha@jcom.home.ne.jp)打ち上げのころには松田さんは普通に戻っていて安心した。ポートレートは次の機会に撮ると約束。

投稿者 Ken Kitano : 2003年09月21日 23:11